佐喜眞美術館のコレクションは館長である、佐喜眞道夫さんが集められた。
ルオーのミセレーレのシリーズは力強い黑とセピア色が印象的なシリーズだ。
通二さんはルオーが好きだった。自身でも油絵を描き大胆な力強いタッチはルオーのそれに通じるところがある。
ケーテ・コルビッツは私も好きな画家である。
そして、最大のコレクションは丸木位里、俊夫婦の沖縄戦の図である。
それは、展示室の一番奥の部屋に飾られていた。両側には‘チビチリガマ’と´シムクガマ‘。
チビチリガマでは集団自決(手を下さない虐殺、と丸木位里は言っていた)があり、反対にシムクガマでは1000人以上が助かった、
沖縄戦の図は圧倒的な力で私に迫ってきた。
その後、私たちは読谷村にあるチビチリガマとシムクガマを訪れたのだが、住宅街のごそっと入った中に突然それがあった。
そのこと自体、びっくりしたのだがガマを前にただただ、立ち尽くした。
丸木夫妻の絵の通りだった。気配が感じられる。亡くなった方々の無念さが、戦争の恐ろしさが感じられた。
真っ暗なガマの中で人々はどんな思いでぽっかり空いた入り口の青い空を見ていたのだろうか。
佐喜眞さんの思いは、アートの力を使って沖縄の地に心の内面を整える「もの想う空間」、若い人へ戦争を繰り返してはならないという一番大切なメッセージを伝える美術館となること。それが普天間の基地に食い込んで立っている。
ヨーコさんも通二さんも戦争を経てきた。
晩年、仕事が一段落した時、思い出すのはあの時代。焼け野原が、それぞれの人生を変えた。
佐喜眞美術館に来るたびに色々なことを思ったのではないか。
また、美術館建設と運営の大変さをしっている二人は佐喜眞美術館を応援する気持ちもあったのではないかと思う。