今年は戌年です。今日ご紹介するのは犬に因んだニキとヨーコさんのエピソードです。
晩年、ニキは身体の不調に冒され、穏やかな気候のアメリカ・サンディエゴに移住します。癒しのためにさまざまなセラピーを試みます。とりわけニキは、自分の片腕だったアシスタントのリカルドを亡くしたことで、悲しみのあまり笑うことができなくなります。このため「笑う」セラピーを取り入れます。朝晩の2回、約5分間、声をあげて笑い続けるのです。
なにもないところで「笑う」ということはなかなか難しそうだなと思います。
けれどニキはこのセラピーを取り入れて徐々に笑うことができるようになったと言っています。
そしてそのうち「吠える」ということも追加されました。
その頃、ニキはある人物とのトラブルを抱えていたのですが、その人に向かって
「噛みつく」ことを連想し、それが犬を想起し、「吠える」ことにつながっていったのだとか。思い切って吠えればストレス解消間違いなし、ということなのでしょう。病膏盲に入るで、ニキはこのセラピーを基に「クラブ オブ バーカーズ」(吠える人たちの会)を結成してしまいます。メンバーはニキのスタッフや友人、ニキを訪ねてくる人たちです。
つまり、みんなが集えば「バウワウバウワウ」「ウーフ」と吠えまくる。最初は小型犬のように小さな声しか出せなくても、慣れてくると中型犬、大型犬のように声が出せるようになっていきます。このころのサンディエゴのアトリエはさぞ賑やかだったことでしょう。
ニキは「吠えてみるとすごい解放感があるのよ」とヨーコさんに手紙を送っています。そして、犬の図鑑まで買い込むという熱の入れよう。
手紙によると、街中を歩く犬は何という種類で、その犬が自分の知っている人に似ていないかまで連想するという。
手紙は続きます。
「昨日は、犬のジャン・ガブリエルとリコと、マーレラ・アニュエリを見かけたし、今日はジェフリー・ローリアに会いました。
まだ犬のあなたには会っていません。ヨーコ、私に電話で吠えてみてください!
そうすればあなたがどんな種類の犬かがわかります。
クラブ オブ バーカーズ のみんなで吠えた声をテープに録音したからあなたにも送ります。きっと楽しいわよ」
しばらくしてテープが送られてきた。ヨーコさんも早速真似てワンワンと吠えた。ニキが、ヨーコさんの吠え方でどんな犬を連想したか定かではないが、答えを聞きたかった。ヨーコさんの息子で私の夫は「ヨーコさんは、さしずめ黒のスコティッシュテリアだね」
笑うから吠える――ニキのこのセラピーは自身の健康回復に大いに役にたった。
ヨーコさんもその後、「クラブ オブ バーカーズ」の一員になったが、皆さんも一度犬のように吠えてみては?
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次回からはしばらく不定期の掲載にいたします。