ファッションあれこれ、その一

ファッションの大御所クリスチャン・ディオールとニキとの関係?大いにありです。ご存じでしたか。

今年(2017年)のディオールの「18年春夏パリ・コレクション」は、なんとニキの作品がコレクションに取り入れられている。

モデルたちが纏うのは、ニキのモンスターや女たちだ。鮮やかな色彩が軽やかに跳ねている。

ショウ会場には、ニキが作品に用いたミラーワークが取り入れられ、ニキの世界観が再現される。映像をみた私も、その色彩やファッションに新鮮さを感じるコレクションだと思った。

このコレクションについて、フェミニズムの視点から、また1965年、ディオールのアーティスティックディレクターだったマルク・ボアン氏とニキとの友情、そこからインスピレーションを受けたとプレスが説明している。

当時ボアン氏はニキの女性像ナナを数点購入し、その後ニキは自身の香水の発表時に着る衣装を依頼し、お互いの作品を評価しあった、という。

ニキはモデルの仕事をしていただけあって、大変なおしゃれだった。彼女のすらりとした美しい容姿には何を着てもよく似合った。

その頃のヴォーグ誌に載ったニキのインタビュー記事がある。アーティストとしてニキの洋服に対する考え方が面白いのでここで紹介すると――。

「私の服装という点ではね。私は人を引き付けたい。でも、それは何よりも自分自身を誘惑したいという欲望なの。なぜなら、自分が自分に魅惑されるとき、私はとても解放された気分になるから。いっそう安らかな気持ちになるから――。私のボア、ブーツ、赤いドレス、要するに私の変装道具は、私の芸術創造のアクセサリー以外の何ものでもないと思うわ。それは、ちょうど仕事の中に用いるセルロイドの人形のように、自分自身をひとつのオブジェにしてみたいという願望の表れよ。ひとつの彫刻作品をこしらえるとき、一切れの金網を使うように、ファッションにおいて私は自分のからだを使うの。そして同時に、私は気楽な気分でいるわ。なぜなら、服や帽子は結局、私自身と何の関係もないのだから。

それはひとつの部分、私が抱く沢山の夢の中のひとつの奇妙なかたち、ということでしょうね」

アーティストとして自分も作品だというニキ。ある時、クレオパトラ風のファッションで制作していた姿が思い出される。あの時ニキはまるで気高い女王として君臨し、絶世の美女として世界を魅了しながら、作品と対峙しているようだった。また、ある時は木綿に刺繍がほどこされたチュニック風の上着に麦わら帽子に運動靴。そして、ある時はスポーティに、パンツをはき自身がデザインしたTシャツにスカーフをさりげなく巻いてジャケットを羽織ったりと、一つの形にとらわれることなく、その時々の気分で創作活動を楽しんでいるようだった。

ニキが初来日した1998年のことである。

一行を京都に案内するというので、私もお供をすることになった。

その時、私は佐渡の藍染作家の作った一枚布のワンピースを着ていた。

全体に藍色で肩のあたりは濃いめの水色になっている。

袖口には、白と金で抽象的な模様が描かれ腰より下のあたりにポケットがついている。布が薄いので着やすくて、全体にさらりとした感触だった。

ニキは私の着ている服を見ると「ユキの着ている服はなに?」と早速興味を示した。

私が藍染について説明すると、ニキは興味津々の顔で聴き入った。

ヨーコさんが「後日、同じようなものを探して送るわね」とニキに。

しかし、その後日ヨーコさんが探しても私が着ているような軽い一枚布の藍染ワンピースは見つからず、結局、送るのを諦めたとの事だった。

温暖なサンディエゴで「Japan blue」を着たニキが見られなかったのは残念な事であった。

 

 

 

 

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次回の「ヨーコのエピソード」は12月に掲載します。お楽しみに。